今日の海外トレンド|日本で流行る前にチェック!
ホーム
美容
七月の終わりに、ひとつの哲学が消える音を聞く
七月の終わりに、ひとつの哲学が消える音を聞く
6月 27, 2025
まずは、この物語の主人公について、無機質な事実だけを並べておこう。感傷に浸るのは、その後だ。 * **ブランド名:** REN Clean Skincare(レン・クリーン・スキンケア) * **誕生と故郷:** 2000年、イギリス・ロンドン * **掲げた思想:** いわゆる「クリーンビューティー」の草分け的存在。肌と地球に優しくない成分(パラベン、サルフェート、合成香料など)を徹底的に排除。敏感肌の救世主とも呼ばれた。 * **代表的な作品:** * Ready Steady Glow Daily AHA Toner * Evercalm™ Global Protection Day Cream * **転機:** 2015年、巨大企業ユニリーバの傘下へ。 * **終焉の宣告:** 2025年5月、ユニリーバがブランドの清算を発表。 * **最後の幕引き:** 2025年7月31日をもって、すべての製品販売を終了。 --- その知らせは、まるで長年通い続けた静かな純喫茶が、ある日突然、何の気配もなくシャッターを下ろしてしまったと知らされた時のような、鈍い喪失感を伴っていた。REN Clean Skincareが、七月の終わりに消える。 私の記憶の中のRENは、いつだって涼やかな顔をしていた。すりガラスのような、ひんやりとしたボトルの手触り。蓋を開けた瞬間に広がる、柑橘とハーブが混じり合った、甘すぎない大人の香り。肌に乗せれば、すっと馴染んでいく誠実なテクスチャー。それは単なる化粧品というより、一種の「お守り」に近い存在だったのかもしれない。(ああ、また一つ、信頼できる友人がいなくなるのか…) そもそもRENが産声をあげた2000年、「クリーンビューティー」なんて言葉は、今のように誰もが口にするお題目ではなかった。それは流行りのマーケティング用語ではなく、もっと切実で、静かな哲学だったはずだ。肌が敏感で、市販の製品に裏切られ続けてきた人々にとって、RENの掲げた「NOリスト」は、暗闇に差し込んだ一筋の光だったに違いない。あれはダメ、これも入れない。その引き算の美学は、声高に効果を叫ぶだけのスキンケア業界に対する、ささやかで、しかしあまりにも力強い反抗声明だったのだ。 ねえ、少し想像してみてほしい。情報が溢れかえる巨大なスーパーマーケットで、どこか途方に暮れていたあなたが、ふと、店主の顔が見える小さな八百屋を見つけた時の安堵感を。RENは、そんな八百屋だった。どの野菜が、どんな土で、どんな想いで作られたのかを、訥々と、でも正直に語ってくれる。私たちはその実直さに、製品そのものの効果以上の価値を見出していたのではなかったか。 その小さな八百屋が、ある日突然、世界的な巨大スーパーチェーンに買収された。それが2015年のこと。多くのファンは、これで安泰だと思ったかもしれない。私も、そうだった。大きな資本の傘下に入ることで、この静かな哲学が、もっと多くの人に届くようになるのだと。だが、現実はそう甘くはなかったらしい。(結局、物語はいつも同じ結末を辿るのだろうか…) ユニリーバの公式声明を読めば、「市場環境の変化」だとか「競争の激化」だとか、それらしい言葉が並んでいる。まあ、そういうことなのだろう。RENが耕した「クリーン」という畑は、いつしか誰もが参入する激戦区になった。より安く、よりキャッチーな言葉を掲げたブランドが次々と現れ、哲学はいつしか「コンセプト」に、思想は「トレンド」へと姿を変えていった。 RENの消滅を、私は大胆にもこう例えたい。**それは、手書きの手紙の文化が、大量生産のグリーティングカードに駆逐される物語だ、と。** 一枚一枚、インクの滲みや筆圧に書き手の体温が宿る手紙。それを受け取った時の、じんわりとした喜び。RENの製品には、そんな手触り感があった。一方で、市場に溢れる「クリーン風」製品は、美しくデザインされてはいるものの、どこか均一で、誰にでも当てはまる無難な言葉が印刷されたカードのようだ。手軽で、安価で、間違いはない。でも、そこに「私のためだけ」という特別な温もりは、果たしてあるのだろうか。 巨大な船団の一部となったRENという小さな船は、嵐の中で自らの航路を見失い、静かに沈んでいくことを選んだのかもしれない。いや、選ばされた、と言うべきか。経営陣の不和だとか、戦略の失敗だとか、内部事情をあれこれ詮索するのは野暮というものだろう。ただ、結果として、一つの個性が、市場という巨大な海に飲み込まれてしまった。その事実だけが、重くのしかかる。 SNSを覗けば、世界中のファンからの悲痛な叫びで溢れている。「私の人生を変えたクリームなのに!」「あのトナーなしでどうすれば…」。その言葉の一つ一つが、手書きの手紙のように切実だ。それは、単なる消費者としての嘆きではない。共に時代を歩んだ友人への、惜別の辞だ。 では、この静かな友人の死を前にして、日本の片隅にいる私たちに何ができるというのだろう。 もちろん、手に入るうちに愛用の品を買いだめしておくのは、賢明な判断だ。「Ready Steady Glow Toner」のストックを確保し、「Evercalm」のクリームを戸棚に並べる。それは、消えゆく思い出を物理的に繋ぎとめる、ささやかな抵抗だ。 でも、それだけじゃ、あまりに寂しくないだろうか。 本当に私たちがすべきことは、RENが遺した「ものさし」を、自分の中に受け継ぐことじゃないかと思う。成分表をただ眺めるのではなく、その背景にある哲学を想像する力。パッケージがリサイクル可能かどうかを気にかける視点。大量生産のグリーティングカードに埋もれることなく、自分の心に響く「手書きの手紙」を見つけ出す審美眼。 RENの代わりは、見つかるかもしれない。Paula’s Choiceも、The Ordinaryも、素晴らしいブランドだ。けれど、私たちはただ「代わり」を探すのではなく、RENが教えてくれたように、自分自身の肌と、そして心と対話しながら、次の相棒を選ぶべきなのだ。 七月の終わり。ひとつのブランドが、その25年の歴史に幕を下ろす。 それは、クリーンビューティーという一つの時代の終わりを告げる、静かな鐘の音なのかもしれない。 でも、耳を澄ませてみてほしい。 その音が止んだ時、次に聞こえてくるのは、私たちが自らの足で、新たな価値を探し始める、新しい始まりの足音のはずだから。 さようなら、REN。君が耕してくれた畑で、私たちはまた新しい種を蒔こうと思う。君が教えてくれた、あの実直なやり方で。 --- ## 🔗 参考リンク 1. [REN Clean Skincare to vanish for good as brand shuts down – The Sun](https://www.thesun.co.uk/money/35582628/british-skincare-brand-to-vanish-for-good-in-days/) 2. [Unilever to shut down REN Clean Skincare by Q3 2025 – Reuters](https://www.reuters.com/business/retail-consumer/unilever-shut-down-ren-skincare-business-2025-05-01/) 3. [REN Clean Skincare cult-favorite toner fans devastated – Independent](https://www.independent.co.uk/extras/indybest/fashion-beauty/skincare/ren-skincare-closing-b2761836.html) ---
美容
コメントを投稿
0 コメント
Most Popular
2026年メイクトレンドは“色と質感の解放”へ——ビビッドカラーと未来系ラメで楽しむ自分らしさ
12月 08, 2025
バンガードがついに暗号資産ETFを解禁、個人投資家にビットコインなどへの新しい窓口が開く 🎉
12月 08, 2025
『Cosmic Princess Kaguya!』公開直前 ― 最新トレーラー公開 & その魅力を大解剖 🌕🎶
12月 07, 2025
Tags
AI
SNS
アニメ
インターネット
エンタメ
ガジェット
ゲーム
サイエンス
スポーツ
セキュリティ
ソフトウェア
ドラマ
ビジネス
ファッション
ライフスタイル
ライフハック
飲食
映画
音楽
環境
経済
健康
政治
美容
有名人
旅行
このブログを検索
12月 2025
46
11月 2025
91
10月 2025
93
9月 2025
90
8月 2025
88
7月 2025
92
6月 2025
82
5月 2025
50
4月 2025
17
Powered by Blogger
不正行為を報告
Contact form
0 コメント