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美の遊園地か、それとも承認欲求の巨大な鏡か
美の遊園地か、それとも承認欲求の巨大な鏡か
6月 28, 2025
まず、これから語る奇妙で、そして極めて現代的な「聖地」について、乾いた事実だけを書き留めておこう。感情が氾濫するのは、そのあとだ。 * **施設の名称:** Superdrug "Beauty Playground"(スーパードラッグ “ビューティー・プレイグラウンド”) * **所在地:** 英国、ロンドン・ストラトフォードウエストフィールド * **開園日:** 2025年6月 * **コンセプト:** 美容品の「購入」を、「遊び」「撮影」「体験」というエンターテインメントへと昇華させた空間。 * **主なアトラクション:** * **ネイルバー:** プロによる施術と即時撮影が可能なフォトスポット。 * **メイクアップ・ステーション:** AI診断などを駆使し、専門家と人気ブランドを試せるエリア。 * **セルフィースタジオ:** 複数テーマの撮影ブースに、リングライトや三脚まで完備された空間。 * **サステナブルゾーン:** 環境配慮型製品やヴィーガンブランドを集めたエリア。 * **主な巡礼者:** TikTokやInstagramと共に呼吸する、Z世代からミレニアル世代。 --- 「ビューティー・プレイグラウンド」。 その言葉を初めて聞いた時、私の脳裏に浮かんだのは、きらきらしいパステルカラーの世界と、甘ったるい香料の匂い、そして甲高い笑い声が反響する、どこか現実離れした空間だった。美の、遊び場。なるほど、言い得て妙だ。だが同時に、背筋に少しだけ冷たいものが走るのを禁じ得なかった。(ここまで来たか、と溜息をつくべきか、それとも拍手を送るべきか…) これはもはや、単なる「店」の話ではない。一つの「現象」であり、時代が映し出す巨大な鏡そのものだ。 ねえ、少し思い出してみてほしい。あなたが初めて「化粧」という行為に触れた、あの瞬間を。私にとってそれは、母の鏡台だった。静まり返った部屋で、誰にも見つからないように、そっと紅い口紅を指先に取り、おそるおそる唇にのせた。あの時の、微かな罪悪感と、大人への階段を一段のぼったような、秘密めいた高揚感。心臓の音がやけに大きく聞こえた、あの薄暗い部屋。私の美の原体験は、徹底的に個人的で、内省的で、誰にもシェアしない(できない)神聖な儀式だった。 翻って、この「Beauty Playground」はどうだ。 ネイルバーで爪を彩り、すぐさまインスタ用のブースで写真を撮る。メイクアップ・ステーションでは、プロのアドバイスを受けながら完璧な顔を作り上げ、そのプロセスすらコンテンツになる。そして極めつけは「セルフィースタジオ」。完璧な照明、完璧な背景、完璧な角度を約束する機材たち。そこにあるのは、内なる自分との対話ではない。外に向けた、他者の視線を前提とした「完璧な私」の構築作業だ。試すこと、撮ること、シェアすること。そのすべてが、他人の「いいね!」を栄養にして輝くように設計されている。 もしかすると、私たちはもう、一人で静かに鏡と向き合う勇気を失ってしまったのだろうか。 この場所の本質を捉えるには、「遊園地」という言葉だけでは生ぬるい。私は、この空間をこう呼びたい。**これは、デジタル時代の「美の巡礼地」なのだ、**と。 かつて人々が、罪の許しや魂の救済を求めて、遠く離れた教会や神殿へと旅をしたように、現代の若者たちは、完璧なセルフィーという名の「救い」を求めてこの場所に集う。セルフィースタジオにずらりと並んだリングライトやスマホ三脚は、さながら祭壇に灯された無数の蝋燭だ。そこで人々は祈りを捧げるようにスマホを構え、最も美しく見える奇跡の一枚が撮れた瞬間、SNSという広大な世界へそれを発信することで、カタルシスを得る。他者からの「承認」という名の祝福を受けるまでは、その儀式は決して終わらない。 これは遊びなんかじゃない。極めて真剣で、切実な、現代の儀式なのだ。 (恐ろしいほど巧みなビジネスだ、とは思う。人間の根源的な欲求を、的確に掬い取っているのだから) 彼らは商品を売っているのではない。「理想の自分になれるかもしれない」という体験と、その体験を「証明」するための舞台装置をセットで売っているのだ。私たちは口紅の色そのものよりも、その口紅を塗った自分が、キラキラしたスタジオで微笑んでいる「写真(という事実)」にお金を払う。消費の対象が、モノからコトへ、そして「記録」へとシフトしている。その変化を見事に捉えている。 しかし、このきらびやかな巡礼地の光が強ければ強いほど、その影もまた、濃くなる。 ねえ、あなたのスマートフォンのカメラロールを、今すぐ開いてみてほしい。そこに並ぶあなたの顔は、本当にあなたの顔だろうか。それとも、誰かに「いいね」と思ってもらうために作り上げた、美しい偶像だろうか。 この遊園地で目一杯遊んだあと、家に帰り、すべてのフィルターを外し、すっぴんのまま洗面所の鏡の前に立った時、そこに映る自分を、私たちはまっすぐに見つめることができるだろうか。その瞳を、愛することができるだろうか。 ロンドンの新名所を、手放しで「素晴らしい!」と賞賛するのは簡単だ。時代の最先端であり、多くの若者が熱狂する熱量を否定するつもりもない。そこには確実に、人を惹きつける抗いがたい魅力と楽しさがある。 だが、エッセイストの端くれとして、私はその光の裏側にあるものに、どうしても思考を巡らせてしまうのだ。完璧なイメージを追い求めるあまりに疲弊していく心。デジタルな虚像と、生身の自分との間に生まれる乖離。その溝を埋めるために、また新たな「映え」を求めて巡礼の旅に出る…。そのループは、果たして私たちを幸福にするのだろうか。 この「Beauty Playground」は、毒にも薬にもなる劇薬だ。それは、自己表現の可能性をどこまでも広げてくれる魔法の場所であると同時に、自分自身を見失いかねない、巨大な迷宮でもある。 もしかしたら、この遊管地での体験は、すべて予行演習なのかもしれない。様々な自分を試し、演じ、撮影する。その喧騒の中で、本当に自分が心地よいと感じる「美」の輪郭を探るための。そうであってほしい、という願望を込めて、私はこの現象を見つめている。 最終的に問われるのは、遊園地を出た後、たった一人で鏡の前に立った時の、あなたの心の在り方だ。その静寂の中でこそ、本当の「美」との対話は始まるのだから。 --- ### 🔗 参考リンク 1. [Inside new Superdrug store where customers can test out products for FREE – The Scottish Sun](https://www.thescottishsun.co.uk/money/14998372/inside-new-superdrug-store-free-popup/) 2. [Superdrug opens first permanent beauty playground, 29 more planned soon – FashionNetwork](https://dk.fashionnetwork.com/news/Superdrug-opens-first-permanent-beauty-playground-29-more-planned-soon%2C1744076.html) 3. [Beauty Playground launches at Superdrug Stratford – London Post](https://london-post.co.uk/beauty-playground-launches-at-superdrug-stratford/) 4. [Superdrug launches immersive Beauty Playground concept at Westfield Stratford – Retail Gazette](https://www.retailgazette.co.uk/blog/2025/06/superdrug-beauty-playground/)
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