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嵐のあとさき、あるいは市場が奏でる忘却のシンフォニー
嵐のあとさき、あるいは市場が奏でる忘却のシンフォニー
7月 03, 2025
物語を始める前に、まずは今回の熱狂を記録した、無機質な楽譜(スコア)をご覧いただこう。この数字たちが、どんな音楽を奏でたのか。それを知っておくと、この後の話がより面白くなるはずだ。 * **何が起きたか:** 2025年の第2四半期(4~6月)、米国の株式市場が息を吹き返し、主要な株価指数が歴史上、最も高い音を鳴らした。 * **主役の指数たち:** * **S&P 500:** 6,187ポイントという未知の領域に到達。この3ヶ月で約10%も上昇した。 * **ナスダック総合:** こちらはさらに凄まじく、20,370ポイント台に乗せ、同期で約17%という驚異的な伸びを記録した。 * **背景にあった「静寂」:** * **米中関係の雪解け:** あれほど世界を凍りつかせた関税戦争の緊張が、一部緩和された。 * **地政学リスクの低下:** 中東での火種が少し小さくなり、原油価格が落ち着きを取り戻した。 * **金利への淡い期待:** 米連邦準備制度(Fed)が「そろそろ利下げでも…」と囁き始めた(と市場が勝手に期待した)。 --- 市場というのは、驚くほど忘れっぽい生き物だ。 ついこの間まで、米中貿易戦争だ、地政学リスクだと騒ぎ立て、世界の終わりが来たかのような土砂降りに怯えていたはずなのに。空にほんの少し青空がのぞいた途端、水たまりで遊ぶ子供のように、あっけらかんと大はしゃぎを始める。昨日までの恐怖なんて、まるで夢だったかのように忘れてしまう。 (まったく、現金な奴らめ。だが、その忘れっぽさこそが、市場を前進させるエネルギーなのかもしれないな) 2025年の春から夏にかけて、僕たちはその典型的な光景を目の当たりにした。この一連の出来事を、僕は**「嵐が過ぎ去ったあとの野外音楽堂で、突如として始まった、巨大オーケストラによる狂乱のシンフォニー」**として記憶している。 ねえ、ちょっと想像してみてほしい。数ヶ月前まで、この音楽堂には激しい雨風が吹き荒れていた。ティンパニ(米中間の関税問題)が雷鳴のように轟き、チューバ(中東の地政学リスク)が地響きのような不気味な低音を唸らせていた。聴衆(投資家)は皆、ずぶ濡れになりながら、演奏が中止になるのではないかと固唾を飲んで身を寄せ合っていたんだ。その時の、肌を刺すような冷たい雨の感触、低く垂れ込めた雲の匂いを、まだ覚えているかい? ところが、だ。 風がやみ、雨が上がった。あれほど鳴り響いていたティンパニとチューバが、ぴたりと沈黙した。その一瞬の静寂の後、指揮者(市場心理)は待っていたとばかりに、大きくタクトを振り上げた。 その瞬間、空気が震えた。 S&P 500という名の第一ヴァイオリンが、そしてナスダックという名のフルートが、それまで誰も聞いたことのないような、きらびやかで鋭い高音を奏で始めたんだ。第2四半期で10%、17%という上昇率。それはもはや音楽の域を超え、聴く者の理性を麻痺させる、一種の超音波だったのかもしれない。 このシンフォニーの主役(ソリスト)は、言うまでもなく花形のハイテク企業たちだ。マイクロソフト、Amazon、そしてNVIDIA。彼らが奏でる「AI」という名の旋律は、あまりに甘美で、抗いがたい魔力に満ちていた。その未来的な響きに、聴衆は我を忘れて熱狂した。 そして、その華やかなメロディを、チェロやコントラバスのパート(Fedの利下げ期待)が、低く、しかし確かに支える。「大丈夫、まだ音楽は終わらない。夜はまだ長いよ」と、優しく囁きかけるように。この心地よい低音に安心しきった聴衆は、もはや疑うことをやめてしまった。 この壮大なシンフォニー、君はどこか遠くのVIP席で、高みの見物をしているつもりかい? とんでもない。スマホひとつで株を売買できる僕らは、良くも悪くも、このオーケストラの一員なんだ。なけなしの小遣いで買った株は、トライアングルの一打かもしれない。NISAで積み立てた投資信託は、クラリネットの控えめな和音かもしれない。いずれにせよ、僕らは皆、この巨大なアンサンブルに参加している当事者なのだ。 だからこそ、熱狂の渦中で自分のパートを見失ってはいけない。周りの音に浮かされて、意味もなく叫んだり、楽器を放り出したりしてはならない。SNSで「米中緩和で株爆上げ🔥」なんていう威勢のいい見出しが飛び交うのは、いわばコンサート会場で誰かが奇声を発しているようなものだ。それに釣られて冷静さを失うのは、素人のやることだ。 しかし、忘れてはいけない。どんなに素晴らしい演奏会にも、アンコールの後には必ず終わりが来る。 指揮者がいつ、ぴたりとタクトを下ろすのか。嵐を呼ぶティンパニが、再びいつ不気味に鳴り響き始めるのか。それは誰にも分からない。さっきまで甘い低音を奏でていたチェロが、景気や雇用の回復という楽譜の新しいページをめくった途端、「利下げはまだ早い」と厳しい音色に変わるかもしれない。 だからこそ、僕らはただ熱狂に身を任せる聴衆であってはならない。常に楽譜の数小節先を読み、次の楽章がどんな曲調になろうとも対応できるよう、準備しておく冷静な演奏者でなければならないんだ。テクノロジーという名のヴァイオリンだけに頼らず、ヘルスケアや生活必需品という名の、地味だが安定したヴィオラの音色も、自分のアンサンブルに加えておくべきだろう。 史上最高値の更新。そのニュースの裏側で、僕は熱狂する人々の汗の匂いと、静かに次の嵐を待つ雲の気配の両方を感じ取っている。この忘却のシンフォニーが、単なる一過性の熱狂で終わるのか、それとも新しい時代の幕開けを告げる序曲となるのか。 その答えは、まだ誰にも分からない。ただ、タクトが振り下ろされるその瞬間を、僕らは見逃してはならないのだ。 --- ### 📚 参考リンク * [S\&P 500, Nasdaq at record highs as trade hopes feed quarterly momentum – Reuters](https://www.reuters.com/business/sp-500-nasdaq-futures-climb-record-highs-trade-optimism-2025-06-30/) * [Instant view: Wall Street closes at record highs after turbulent months – Reuters](https://www.reuters.com/business/view-wall-street-hits-record-highs-after-turbulent-months-2025-06-27/) * [US stocks close at an all-time high just months after plunging on tariff fears – AP News](https://apnews.com/article/53ddd3e8d11be4d09419418b4f141382)
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