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ロンドンの「Ishkar」が示す新しいクラフトリテールのかたち
ロンドンの「Ishkar」が示す新しいクラフトリテールのかたち
12月 16, 2025
――アフガン工芸に“正当な対価”を支払うという選択 ロンドンの街角で、いま静かに存在感を放っているショップがある。その名は「Ishkar(イシュカー)」。扱っているのは、アフガニスタンの職人たちが手がけたラグやテキスタイル、陶器などの工芸品だ。一見するとエシカル系セレクトショップの一つに見えるが、その中身はかなり異質で、そして現代的だ。Ishkarが掲げているのは、「クラフトに正当な対価を支払う」という、極めてストレートな理念である。 近年、サステナブルやエシカルといった言葉はファッションやライフスタイルの世界で当たり前のように使われている。しかしIshkarは、耳触りの良いスローガンよりも、価格の付け方と流通構造そのものに踏み込んでいる点が特徴だ。Financial Timesが取り上げたことで、この店の存在は一気に国際的な注目を集めることになった。 ## アフガニスタン工芸が置かれてきた現実 アフガニスタンは、長い歴史の中で高度な工芸文化を育んできた地域だ。特に手織りのラグや刺繍、染織技術は世界的にも評価が高い。しかし、その価値が作り手に正しく還元されてきたかというと、答えは否に近い。紛争や政情不安、複雑な仲介構造によって、職人たちは低賃金での制作を余儀なくされてきた。 多くの工芸品は「エキゾチック」「民芸風」といったイメージで消費され、価格は抑えられる一方、販売地では高値で取引される。この歪みが長年放置されてきた。Ishkarは、その構造自体を変えることを目的に立ち上げられている。 ## Ishkarの成り立ちと思想 Ishkarを手がけるのは、エドマンド・ル・ブランとフロール・ド・テーヌという二人の創業者だ。彼らは単にアフガン工芸を「売る」のではなく、「どう売るか」を最初から設計している。職人との直接的な関係構築、制作背景の透明化、そして価格設定の開示。これらを徹底することで、「安く仕入れて高く売る」という従来の構図を排除している。 Ishkarでは、なぜこの価格になるのか、どれだけの工程と時間がかかっているのかが、商品とともに語られる。価格は隠されるものではなく、価値の一部として提示される。ここに、クラフトを“物語”ではなく“労働”として尊重する姿勢が表れている。 ## クラフト主導型リテールという新しいモデル Ishkarが提示しているのは、「クラフト主導型リテール」とも言えるモデルだ。トレンドや大量消費を軸にするのではなく、作り手の技術と時間を中心に据える。これは効率重視の小売とは真逆の考え方だが、いまの消費者心理と強く噛み合っている。 特に10〜40代の層では、「安さ」よりも「納得感」を重視する傾向が強まっている。誰が、どこで、どんな条件で作ったのか。その情報を知ったうえで選ぶこと自体が、購買体験の価値になっている。Ishkarは、この意識の変化を的確に捉えている。 ## ロンドン発である意味 Ishkarがロンドンに拠点を置いていることも象徴的だ。ロンドンは、多様な文化と背景を持つ人々が集まる都市であり、クラフトやアートに対する感度も高い。大量生産品と手仕事が同じ市場で評価される場所だからこそ、Ishkarのような試みが成立する。 また、ロンドンは国際メディアの発信力が強く、Financial Timesのような影響力のある媒体に取り上げられることで、このモデルは一気にグローバルな議論の対象となった。単なる一店舗の成功例ではなく、「これからのリテールのあり方」を問う存在として認識され始めている。 ## 日本の読者にとっての意味 日本にも、民藝や職人文化を大切にする土壌がある。その一方で、価格競争や効率化の波に飲み込まれてきた側面も否定できない。Ishkarの取り組みは、「クラフトは安くあるべき」という無意識の前提に疑問を投げかける。 良いものを長く使い、作り手に正当な対価が支払われる。その循環を選ぶことは、消費の仕方を少し変えるだけで実現できる。Ishkarは、その選択肢を具体的な形で示している。 ## クラフトと価格の関係を問い直す Ishkarが評価されている理由は、アフガン工芸という希少性だけではない。価格を曖昧にせず、安さでごまかさない姿勢そのものが、現代的だからだ。サステナブルやエシカルという言葉を使わなくても、「正当な対価」という一言で、十分にメッセージは伝わる。 クラフトを慈善の対象にせず、対等なビジネスとして扱う。その姿勢は、今後のファッションやライフスタイル業界において、重要な指標になっていくだろう。Ishkarは、小さなショップでありながら、大きな問いを投げかけている。 --- ### 参考リンク [https://www.ft.com/content/17579553-aceb-4fa9-8599-4216aa9c18c0](https://www.ft.com/content/17579553-aceb-4fa9-8599-4216aa9c18c0) [https://www.ishkar.com/](https://www.ishkar.com/) [https://apollo-magazine.com/apollo-40-under-40-craft-ishkar-edmund-le-brun-flore-de-taisne/](https://apollo-magazine.com/apollo-40-under-40-craft-ishkar-edmund-le-brun-flore-de-taisne/)
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