暖房をつけないという選択──英国で「Warm Spaces」が生活防衛インフラになった理由

<div class="separator" style="clear: both;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg5HLHPKQ-m7y1PU-MjkWHQfYHgaKSf7ZPKcaBr-W3keIVU8z-W9pg-Uij6WtsySK59DO65ljDa1cveP7mgj_Khc2ajonBWuGo3UFsGzfVm5etN1nL4g0nmF1JSDMKzCXtSJss1I-6r4sYrwtYQCOiQjLPHatfsO6tT96Zj-dZH9HMIev0qIh1v_Q30xEk/s1536/ChatGPT%20Image%20Dec%2028,%202025,%2012_03_16%20PM.png" style="display: block; padding: 1em 0; text-align: center; "><img alt="" border="0" width="600" data-original-height="1024" data-original-width="1536" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg5HLHPKQ-m7y1PU-MjkWHQfYHgaKSf7ZPKcaBr-W3keIVU8z-W9pg-Uij6WtsySK59DO65ljDa1cveP7mgj_Khc2ajonBWuGo3UFsGzfVm5etN1nL4g0nmF1JSDMKzCXtSJss1I-6r4sYrwtYQCOiQjLPHatfsO6tT96Zj-dZH9HMIev0qIh1v_Q30xEk/s600/ChatGPT%20Image%20Dec%2028,%202025,%2012_03_16%20PM.png"/></a></div> 英国で静かに、しかし確実に広がっている「Warm Spaces（暖を取れる居場所）」が、いま“福祉施策”を超えて**生活防衛インフラ**として認識され始めています。きっかけはエネルギー価格の高止まりと生活費の上昇。暖房をつけ続けることが家計に重くのしかかる中、「家の外で暖を取る」という選択肢が、現実的なライフハックとして定着しつつあります。 ## 暖房を“つけない自由”が必要になった英国社会 英国では2022年以降、電気・ガス料金の急騰が続き、多くの家庭が冬場の暖房使用を控える状況に追い込まれてきました。節約のために暖房を切る、部屋を限定して過ごす、厚着で耐える──そんな工夫が一般化する一方で、「それでも寒さが限界」という人たちの受け皿として注目されたのがWarm Spacesです。 Warm Spacesとは、自治体やNPO、教会、図書館、地域センターなどが無料または低価格で開放する“暖かく過ごせる共有スペース”。お茶や簡単な軽食が提供される場所も多く、誰でも気軽に立ち寄れるのが特徴です。 ## 「支援」ではなく「インフラ」へ変わる位置づけ かつては高齢者や低所得層向けの緊急支援として語られることが多かったこの取り組みですが、最近ではその位置づけが変わりつつあります。英紙ガーディアンが報じたロンドン南部ウォルワースの事例では、Warm Spaceが“困った人の避難所”ではなく、**地域の日常動線の一部**として機能している様子が紹介されました。 仕事の合間に立ち寄る人、在宅勤務の代わりに数時間過ごす人、子ども連れで訪れる家族。利用者層は幅広く、「節約のために使う場所」というより「合理的な選択肢」として受け入れられています。 ## なぜ若い世代にも広がっているのか この動きが10〜40代の若い世代にも広がっている理由はシンプルです。 ・エネルギー価格の不安定さ ・賃貸住宅の断熱性能の低さ ・在宅ワークの増加による光熱費負担 これらが重なり、「自宅＝常に快適であるべき場所」という前提が崩れ始めています。その代わりに、「家と外を使い分ける」発想が浸透しつつあるのです。カフェで作業する感覚に近く、しかも無料。Warm Spacesは、節約と快適さを両立させる現実的な選択肢として支持されています。 ## コミュニティ再生という副次的効果 もう一つ見逃せないのが、地域コミュニティへの影響です。Warm Spacesは単なる“暖房の代替”ではなく、人が集まることで自然な交流が生まれます。孤立しがちな高齢者や一人暮らしの若者が顔を合わせ、会話が生まれる。これは結果的に、メンタルヘルスの悪化防止や地域の見守り機能にもつながっています。 ## 日本にとっての示唆は何か 日本でも電気代の上昇やエネルギー不安は他人事ではありません。特に都市部の単身世帯や築年数の古い住宅では、冬の光熱費が家計を圧迫しがちです。英国のWarm Spacesは、「節約＝我慢」ではなく、「仕組みで支える」発想の転換を示しています。 図書館、公民館、商業施設、空き店舗。既存の場所を少し工夫するだけで、生活防衛インフラは作れる。その可能性を、英国の事例は具体的に示しています。 ## まとめ Warm Spacesは、寒さをしのぐための一時的な施策ではなく、**不確実な時代を生きるための新しい都市インフラ**へと進化しています。節約、快適さ、コミュニティ。そのすべてを同時に満たすこの仕組みは、今後さらに広がっていく可能性が高いでしょう。 ### 参考リンク [https://www.theguardian.com/business/2025/dec/21/community-warm-spaces-rise-uk-walworth-living-room](https://www.theguardian.com/business/2025/dec/21/community-warm-spaces-rise-uk-walworth-living-room) [https://www.warmwelcome.uk/](https://www.warmwelcome.uk/) [https://www.tnlcommunityfund.org.uk/insights/differences-we-make/difference-we-make/responding-to-the-cost-of-living-crisis/cost-of-living-warm-spaces](https://www.tnlcommunityfund.org.uk/insights/differences-we-make/difference-we-make/responding-to-the-cost-of-living-crisis/cost-of-living-warm-spaces)